東京電力福島第一原発事故による風評被害にさらされた桑折町のモモ農家を舞台にした映画「物置のピアノ」の出演者が16日、発表された。高校2年生のヒロイン・宮本春香役には、映画初出演で初の主役となる現役女子高生の芳根京子さん(16)が選ばれた。17日にクランクインする。
芳根さんは東京都出身。昨年12月にスカウトされ、芸能事務所入りした。テレビドラマ「ラスト・シンデレラ」に出演し、今後の活躍が期待される新人女優の一人だ。約400人が応募したオーディションで選ばれた。ピアノ、フルートなどが特技だという。
芳根さんは「どうしてもやりたい役で、決まったと聞いた時はうれしくて泣いてしまった。作品を通して福島の人に少しでも元気を届けられたらうれしい」と意欲を語った。
他の共演者は織本順吉さん(86)、平田満さん(59)、佐野史郎さん(58)、長谷川初範さん(58)など日本を代表するベテラン俳優が名を連ねた。いわき市出身の女性講談師・神田香織さん(58)もピアノの先生役で出演する。
福島市の佐々木祐芽さん(15)=福島南高1年=、優和さん(11)=杉妻小5年=姉妹と、今江佑翔ちゃん(6つ)=福島わかくさ幼稚園=が子役として共演する。
「物置のピアノ」は原発事故など変わりゆく環境の中で、ピアノをめぐり姉と葛藤し、揺れ動きながら成長する女子高生と家族の絆の再生を描いた物語。
今年2月から、銀世界となった冬やハナモモが満開の春の風景などを少しずつ撮りためてきた。8月4日にクランクアップし、年内にも試写会を開き、来年秋の公開を目指す。福島民報社が協賛している。
町内のモモ農家の遠藤秋江さん(63)は「福島の現状を、まず描いてほしい。地域が明るくなり希望が持てるような前向きな映画を期待している」と話した。
■似内監督ら迎え 町応援団歓迎会
桑折町役場で16日、似内千晶監督らスタッフと芳根さんら出演者10人を迎え、町応援団の歓迎会が開かれた。高橋宣博町長が「撮影に専念できるよう、しっかりと支援したい」とあいさつした。
似内監督は「この町で笑って生きていきたいという町民の思いを映像化したい」と語った。
同日朝には町内の諏訪神社に出演者、スタッフら約50人が集まり、映画の成功と安全を祈願した。
(カテゴリー:福島第一原発事故)